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韓屋

韓屋

古き良き北村とそこに暮らす人々 1

北村を隅々まで見て回る方法として新たに登場したのがアッティ リキシャ。北村の新たな側面を観光客に直接伝える、アナログなリアルタイムのニュースソースといえます。三輪リキシャに乗って北村の隅から隅まで探検しましょう。きっと北村と人々の温もりに恋してしまうことでしょう。

アッティリキシャ

アッティリキシャ

北村の道

北村の道

韓屋

韓屋

北村八景

北村八景

韓屋

韓屋

桂洞路を離れて小さな道路を渡ると、韓屋が並んだ小路を見つけました。桂洞路で出会った新しい韓屋の建物とは違い、ひと昔前の風情を残すたたずまい。これだ !私はカメラのシャッターを続けざまに押しました。

屋根瓦とレンガはすべすべとして、まるで祖母の手のような温かみを感じます。今度はシャッターを押さず、そっと手でレンガを触ってみます。聞こえないとわかっている家の鼓動を感じてみたかったのです。

空に向かって高く伸びる軒先の形は、優雅で楽しげです。機械などない、はるか昔にこんなカーブを描き出した人々の技術に驚かされます。韓屋のカーブ以外にも、私達には当たり前すぎて存在を忘れてしまっているものがたくさんあります。なぜか私は、北村でならそうしたものをたくさん見つけられる気がしていました。人々がこの古い村を訪れるのは、そんな失われつつあるものに惹かれるからではないでしょうか。

北村

北村八景

最近の北村がこんなに “ホット” な場所になっているのは、きっと理由があります。実際、”最近” という言葉も少しおかしな話なのです。2000 年頃から始まった再建と保存政策によって北村韓屋村が観光名所として有名になる前に、北村は李朝時代に政府高官の住宅地としてすでに高く評価されていたからです。

一度でも北村を訪れたことのある人ならその理由がわかるでしょう。桂洞の路地を歩いて北村展望台に着くと、古い商業地帯に囲まれたこの地点からはソウルのダウンタウンが一望でき、背後にそびえる百岳山のエネルギーも感じられます。もし現在のコンクリート ジャングルが存在しなければ、ここは清渓川まで見渡せる自然地形の頂点として完璧な場所なのです。

韓屋村の頂上まで上ると、南山も垣間見えます。韓屋の街角には若いアーティストたちの夢が芽生えるワークスペースが至るところにあります。さえぎるもののない広々とした眺め。ここは夢を追う人たちにぴったりの場所です。

北村展望台の入り口

北村展望台の入り口

北村展望台

北村展望台

北村の風景

北村の風景

韓屋村の端の近くに「北村展望台」という小さな看板を見つけました。景色の写真をもっと撮りたかったので、矢印に沿って上ってみます。

これまでもさまざまな展望台に上ってきました。子どもの頃、展望台の望遠鏡はコインを投入するとぼやけたガラスが徐々に明るくなって興奮したものでした。望遠鏡をのぞくとはるか遠くの景色に手が届きそうな気がしたものです。昔、展望台はさびた柵やフェンスに囲まれ、なんだか見ているだけでくらくらするような怖い場所だった記憶があります。

ただ、北村展望台は違います。コーヒーを 1 杯買って、手持ちのコインをかき集めて望遠鏡に投入すれば、好きなだけ北村を見下ろすことができるのです。

北村は、故郷の母親のようなくつろいだ微笑みとたただずまいで、人々を迎えます。北村展望台から見下ろす北村には、人々がカフェのテラスでくつろぎながらコーヒーを楽しむ現代的な風景、温かな情のある昔ながらの風景が両方残っています。路地を行きかう人々までもが風景の一部になっています。

 

古き良き北村とそこに暮らす人々 2

北村は変化の風が吹いている場所。フランチャイズのコーヒーショップが 1 軒また 1 軒と増えるなかで、9 年間も同じ場所で着実に営業を続けるカフェがあります。”同じ場所で” というより “ここに根を張って” というほうがふさわしいカフェ ヨンドゥは、北村を愛する人々の集まる店です。

カフェヨンドゥ

カフェヨンドゥ

カフェヨンドゥの社長

カフェヨンドゥの社長

カフェ ヨンドゥとは ?

「2006 年に北村で開店したコーヒー ショップです。ここに店を構えることに決めたのは、正読図書館に近いこと、大小さまざまな博物館が近隣にあること、閑静なこと。そしてなにより初めて来たときからこの場所に惚れ込んでしまったからです。ヨンドゥは個人の店というよりひとつのコミュニティのようなもの。ヨンドゥと「コーヒー アンド ピープル」という名前の店は、同じ理由で開店した仲間なのです。この店の特徴は、カフェのオープン当初からハンドドリップでコーヒーを淹れていることです。週 1 回、1 か月間続くコーヒー レッスンも開催しています。」

 

北村は変わってきていますか ?

「ヨンドゥが北村にオープンした頃に比べるとずいぶん変わりましたね。観光客が増えて、近くの店も変わりました。以前より北村らしさが消えつつあるのは少し寂しいですが、変化はあって当然だと思います。ただ、北村を訪れる人がもっとこの地区を大切にしてほしいとは思っています。」

 

楽しむコツ 北村の住人がおすすめする北村の名所

「個人的には特定の場所より北村の夜をご紹介したいです。北村を訪れる人にとっては主に観光名所だと思いますが、私たちにとって日々暮らしている街。昼間はあまりにたくさんの人が訪れるので北村の独特の雰囲気を感じにくいのですが、夕方以降は本当の姿を見ることができます。特におすすめしたい夜のコースは嘉会洞韓屋村です。昼間も素敵な場所ですが、暗くなった韓屋村を恋人と歩くととってもロマンティックですよ。」

 

もうすぐ夕暮れ。むっとする蒸し暑さは簡単に和らぎません。目に入ったのは、正読図書館の入口。懐かしくごちゃごちゃした感じは、図書館というより町中の公園の入口のようです。泣いている子どもをおんぶしたお母さんたちが図書館の入口のベンチでおしゃべりをしています。北村のどこへ行っても地元の人はわかるので、自分も故郷へ帰ったときのようなくつろいだ気分になります。

北村の多くの場所と同じように、正読図書館にも長い歴史があります。正読図書館は旧京畿高等学校の跡に 1977 年 1 月 4 日に開館しました。多くの人々が情熱を燃やして読書にいそしみ、常に優秀な学生たちの夢と希望が育まれています。

もちろん、ここにあるのは正読図書館だけではありません。軍事政権下では、李朝王家の系図などを管理し、王朝の親族が勤めた宗親府という官庁が強制的に正読図書館の正面に移されました。宗親府が元の場所である国立現代美術館に復元されたのは、つい数年前のことです。2013 年の冬に宗親府の敬近堂と玉牒堂が正読図書館から移築され、現在は元の場所に再建されています。

昼間の暑さが過ぎた後の北村の路地は多くの人でにぎわいます。若いお母さんが北村の店で買ったシッケ (韓国の伝統的な発酵飲料) を小さな子に飲ませているのを見かけました。ベビーカーに乗るにはちょっと大きくなった年頃。テイクアウトのカップに入ったシッケをおいしそうに飲んでいます。大きくなったらきっと、北村のことを暑い夏の日の甘くて冷たいシッケの味とともに思い出すでしょう。

 

プンニョンライスファームの看板

プンニョンライスファームの看板

トッポッキを作っている店員さん

トッポッキを作っている店員さん

トッポッキ屋の人々

トッポッキ屋

プンニョン ライス ファームは、すぐ隣のトッポッキ屋に来る人が後を絶たないので大忙し。古びた椅子の席が空くのを並んで待っているカップルはとても幸せそう。皿に盛られたトッポッキからは勢いよく湯気が上がっています。このカップルも初めてトッポッキを食べたときのことを話しながら、まだお互いを知らなかった子どもの頃を思い出すのでしょう。

アートソンジェセンターの周り

アートソンジェセンターの周り

アートソンジェセンターの周り

アートソンジェセンターの周り

アートソンジェセンター

アートソンジェセンター

三清洞と接する場所にはアート ソンジェ センターがあります。北村と美術館の組み合わせは、うまく溶けあっているのか、そりが合わないのか、大人になってから幼なじみに再会するような少しぎこちない雰囲気です。でもそれはそれで、子どもの頃にはまったく気づかなかった友達の素晴らしさを発見するような感覚。

アート ソンジェ センターは、夜にライトアップされるとより洗練された高級感を醸し出します。1998 年に設立されたこのセンターは、若く実験的な現代美術を展示する場として有名です。展示や催しは、美術、音楽、文化、建築、ダンス、ファッションと多岐にわたります。この活気あるエンドレスなムーブメントが、北村が “古いけれど時代遅れではない” 理由かもしれません。

古き良き北村とそこに暮らす人々 3

生まれも育ちも北村の若いイ サンオンさんは、今も北村の住人。北村の隠れた魅力と住民の視点からの印象を、北村で育った彼に聞いてみました。

生まれも育ちも北村の若いイサンオンさん

生まれも育ちも北村の若いイサンオンさん

北村はどんなところですか ?

最近はたくさんの人が北村を訪れています。でもときどき残念だなと思うのは、北村を観光客の視点から経験しているだけで、本当の姿を見てもらえていないことです。北村は、韓家の前で写真を撮る、屋台でかわいいアクセサリーを買う、だけで終わってはもったいない場所です。なにより、北村の本当の魅力は人の生活の温もりあふれる空間です。どの街角を切りとっても、人であふれ、にぎわっています。僕自身は、路地を散歩していて子どもたちが遊ぶ声が聞こえたりすると、本当にこの街が好きだと実感するんです。

 

北村の魅力とは ?

本当の北村の姿に興味があるなら、昌徳宮の壁沿いに歩いてみてください。石壁の遊歩道を歩いて行くと、王宮の壁と市民の家が接している地点があります。これは昌徳宮が建てられた当時は想像もできなかったこと。家々が王宮の壁に寄りかかるように建っています。ときには外に干してある洗濯物が見えることも。こんなふうに、北村は人の生活の気配を感じられる場所です。奥へ行けば行くほど、古き良き時代にタイムスリップするような気分になります。家も店も景色も。そうかと思えば、北村から外に出て行くときには南山タワーなど現代的な建物が見えます。僕が思う北村の魅力はここにあります。消えゆくものと新しいものが共存している、他にはない場所です。

 

楽しむコツ 北村の住人がおすすめする北村の名所

三清公園都会の真ん中にある隠れた小さな森です。最近は人気スポットになった北村のなかで、この公園の存在はあまり知られていません。静かな場所なので、かえって異質な存在になっています。小さな公園には、山から流れる水でできた天然の浴場があります。梅雨が明けて夏が来ると、僕も冷たい水を浴びに行くことがあります。休憩をしたい人にとっては憩いの場、遊びに来た人にとっては遊び場というありがたい場所です。

 

日が沈んだ後の北村は、街のあちこちに灯る明かりで再び輝き出します。一日が終わり、新しい時間が始まります。   北村全体に宿る、静かでありながら尽きることのないエネルギーは、半日歩き回って疲れきっていた私に謙虚な気持ちを取り戻してくれます。おそらくそれは、ここを訪れる “人” が絶えないからです。人々は古いものをただ捨て去るのではなく、むしろ手を加え、丁寧に磨き続けているのです。誰もが自分なりの方法で現代を生き抜いているように、北村の人々も人生を価値あるものにするため、さまざまな工夫をこらして生きています。

中央高校の校庭にいるのが学生たちだけではないように。正読図書館のベンチで語り合う赤ちゃんを抱いたお母さんたちのように。今この瞬間、北村にいる人すべてが北村に暮らす人々なのです。人々が同じ意識を共有していなければ、北村を古いながらも決して時代遅れではない場所にすることは難しかったはずです。私は持ち歩いていたカメラを見つめました。私は北村でどんな写真を撮っただろう。ここに流れる時間と暮らしている人々を正確に写し撮れただろうか。できた写真がどんなものでも、きっとほんの少し悔いが残る気がしました。だから私は、いつかまた北村を訪れます。